モーニング ジュエリー ジェットの宝石 ビクトリア女王


モーニング ジュエリー ジェット 宝石 メメントモリ

 

宝石 ジェットジュエリー

意思を表すジュエリー

モーニング・ジュエリーとは、宝石としてのジェットジュエリーなどの亡くなったひとをしのんで喪に服すときに身に着ける装身具のことです。

 

始まりは中世で、故人の形見の品を身につけていましたが、16〜17世紀前半にはメメント・モリ・ジュエリーが登場して、そのメメント・モリとは「死を忘れるな」という意味です。

 

それは、戦争や疫病がまん延したこの時代には、死は常に身近なものであり、いつ訪れるかもしれないものとして覚悟をする意味合いもあったのでしょう、また、17世紀以降には、哀悼の意をあらわすものとしてさまざまなものが作られていきます。

 

イギリス王室

モーニング・ジュエリーは、人類にとって最古の宝石のひとつであり、古代より魔よけとして身に着けられてきたジェットも、1817年、ジョージ4世の愛娘シャーロット妃の葬儀以来、宮廷でも身に着けられるようになります。

 

そして、19世紀後半のイギリスで、ビクトリア女王が夫のアルバート公のために服した長い喪の期間(1861〜1887年)に、ジェットやピクェなどの黒いジュエリーが流行していきます。

 

ビクトリア女王は、アルバート公に初めて会った時、青い目のハンサムな、いとこに一目ぼれしたといい、気性が激しく頭の良い女王の、女性的な一面をうかがわせます。

 

慕い続けたひとと結婚できた時は、どんなに幸せだったでしょう、その愛情は、公の死後も続き、モーニングジュエリーの流行を生み出すことになります。

 

ジェット

宝石 ジェットジュエリー

モーニング・ジュエリーで使われるジェットは、柔らかな艶をもち、ボリュームのあるデザインが多いですが、見た目よりも軽くできています。

 

ジェットは、地中の深くに堆積した流木が長い年月をへて化石になったもので、真珠と同様、人間によって発見された最初の宝石のひとつで、石炭によく似た漆黒の素材は、磨くことによって艶が出るため、石器時代より魔除けとして身に着けられ、古代ローマ人にも「黒い琥珀」と呼ばれて珍重されました。

 

シェイクスピアの物語のなかにも、象牙の白さと対照させて「black as Jet」(ジェットのように黒い)という表現があり、その特質は、柔らかく繊細な細工にも適していたことから、広く装身具に用いられ、19世紀にはモーニングジュエリーの主役になりましたが、世紀末には鉱山も閉鎖され、ジェットを使った装身具もしだいに姿を消していきました。

 

現存するものは、アンティークとしてとても人気があって、また、材料として黒い素材であるジェットにボグオーク(ナラ・カシ類の黒くなる木)などを、流木の化石の代用品として使ったものなどもあります。

 

ピクェ

宝石 ジェットジュエリー

モーニング・ジュエリーの中のピクェは、べっ甲などの黒っぽい地の部分に金や銀に真珠母貝などを象嵌したコントラストの美しい装飾品で、17世紀前後にユグノー教徒(フランス新教徒)により、聖職者に献じるため作り始められました。

 

初期の作品は、ピルケースや嗅ぎ煙草入れなどの小物がほとんどでしたが、19世紀に入るとようやく髪飾りやボタン、バックル、そしてブローチやイヤリングなどの装身具に、その中心が移っていきます。

 

Piqueという言葉の語源は、フランス語のPiquerで、これは突き刺すとか、ピンで留めるという意味を持ちます。

 

※ピクェ
べっ甲、象牙、真珠母貝などの有機素材の表面に、金や銀などから作られたデザイン模様を、一種の象嵌状に連続して張り付けるようにして、その連続模様を楽しむ技法を言います。

 

※象嵌(ぞうがん)
工芸品の装飾技法のひとつで、金属・陶磁・木材などの表面に模様を彫り、そのくぼみに金・銀・貝など他の材料をはめ込むものです。

 

フレンチ・ジェット

宝石 ジェットジュエリー

モーニング・ジュエリーの中で、黒いガラスでできたものはフレンチ・ジェットといい、触ると冷たく、硬質な光がシャープな印象をもっています。

 

喪が明ける

そして、ビクトリア女王が25年にもわたる長い喪をゆるめると、女性たちは一斉に明るい宝飾品を求め、モーニングジュエリーの流行が終わりを告げます。

 

基本的な使い方はありますが、モーニングジュエリーの解釈は広く、恋人たちが愛のしるしとして交わしたロマンティックなジュエリーも多いので、あまりこだわらずに、その魅力を活かせればと思います。

 

※スペルの違い

mourning 哀悼、喪中、服喪期間
morning  朝

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