マナーモード
奈々と彩乃は同じ会社の仲のいい同僚で、今日はちょっと早いので帰りにカフェに寄ってとめどない話をしています。
「これ、彼からもらったネックレスなの、どう?」
「いいじゃない、その彼、いいセンスしてるんじゃない」
「ありがとう」
そして、1時間以上経った頃に店を出て駅に向かいます。
「わぁ、いつものことだけど、この時間は混んでるわねぇ」
「そうねえ、しばらくの我慢ね」
「何とかならないのかなぁ、この混雑は」
「しかたないよ、みんな我慢してるんだから」
「そうね、お互いさまよね、みんな同じことを考えてるんだから仲良くしないといけないわね」
「さすが、奈々はすぐに理解するから大人ねぇ」
そして、ふたりは途中までいっしょなので同じ電車に乗り込んで、発射のベルが鳴ると急いでたくさんのひとが押しながら入ってきました。
まもなくドアが閉まって走り出すと、反動で立っているひとは斜めになったりしながらつり革や手すりにつかまって我慢しています。
そんな状態なので奈々と彩乃も話をせずに黙っていたのですが、突然、奈々が体を震わせ始めました。
「奈々、どうしたの、体が震えてない?」
と、綾乃が聞くと、
「そうなの、だって、私のお尻を誰かが触っているんだもの」
と奈々は小声で体を震わせながら言います。
「それで、なぜ震えているの?」
「だって、ここは電車の中でしょ、マナーモードで訴えているの・・」