宝石物語 日常のストーリー


女の子の願い


女の子が柿の木を見上げています。


枝には美味しそうな柿が付いているので、女の子は柿の木にお願いしてみることにしました。


「ねえ、かきのきさん、わたしにかきをひとつちょうだいな」


すると、驚いたことに柿の木が答えたのです。


「おじょうちゃん、どうして私の子供がほしいんだい?」


「すごくおいしそうだからママにもっていってあげたいの」


「この柿たちは私の可愛い子供だよ」


「かきのきさんのこどもなの?」


「そうだよ」


「じゃあ、わたし、いらない」


「どうして?」


「だって、わたしだってママからはなれるのはいやだから、わたしがもっていったらかきがかわいそう」


「でもいいよ、ひとつ持っていきなさい」


「えっ、いいの?」


「私の子供のことをそんなに好きなら、私も嬉しいんだよ」


「うん、ありがとう」


「ほら、いくよ」


そして、かさかさっと、音がしたと思ったら柿が落ちてきました。


落ちた場所にはちょうど柿の葉が積もっていて、それがクッションの役目をしながらコロコロッと女の子の前に転がっていきます。


それは、夕日に照らされて艶々で赤みがある美味しそうな柿です。


「すごーい、おいしそう、たべたら、このかきさんのたねをうえておくね。


おおきくなったらこんどはわたしがかきをもってきてあげるからね。


そうしたら、かきのきさんのまごになるんでしょ」


「わかった、約束だよ、さあ行きなさい、優しいおじょうちゃん」


「それとね、こうえんでみつけたゆびわなの、あげるからここにおいておくね、じゃまた来るね、バイバイ」


少し間を置いて、男が柿の木から降り始めます。


「やれやれ、ちょうど柿を取っていたら子供が話しかけてきたので調子に乗ってしまったよ。


我ながら夢のある役を演じてしまったようだ」

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