ギメルリング フェデリング ポージーリング
愛を結ぶ指輪(リング)
指輪(リング)を交換する歴史は古く、古代ローマ時代にまでさかのぼるといわれていて、時代をへて、徐々に宝石のついた婚約指輪と、シンプルな金の結婚指輪を贈ることが習慣化し、やがて、ギメルリング、フェデリング、ポージーリングも登場していくことになります。
とくにビクトリア時代には、女王が婚約指輪に選んだ、永遠の愛をあらわす「蛇」(自分の尾を口にくわえて環状になった)をはじめ、ふたりの絆をあらわす「バックル」、変わらぬ愛情のしるしとして結び目をかたどった「愛結び」、そして、花言葉に由来する「忘れな草」(真実の愛)やハートなど、ロマンティックなモチーフが好まれ、現在に受け継がれます。
そして、イギリスでは、1840年にビクトリア女王とアルバート公のご成婚の際に、ドイツの習慣にしたがい、花嫁に金の指輪(リング)を、花婿に銀の指輪を贈るという指輪の交換(リング)をしたことで流行していきます。
愛を誓う指輪
ふたつ若しくはみっつの指輪が重なり合いひとつになる指輪(リング)は、ラテン語の「双子」を意味するゲメルスに由来し、ギメルリング(GimmelRing)と呼ばれ、16〜17世紀のヨーロッパで婚約・結婚指輪として流行しました。
ふたつ若しくはみっつの輪をつないだ指輪(リング)で、輪の部分を重ね合わせるとひとつの指輪(リング)になる形式をもっていて、フェデ・リングのように2本の手をデザインする場合もあり、普通は指輪の内側に文字などの飾りを施してあります。
日本では大正時代に、結婚指輪の習慣もすっかり定着したころに、ギメルリングが売りに出されて流行の一翼を担いました。
結婚指輪として
宗教学者のマルチン・ルターとカテリーヌ・ボーラは1525年に結婚して、ふたりはギメルリングを結婚指輪として交換し、彼らのギメルリングはとても良くできたもので、リングの部分には、「神の結びたまうもの、何人も解くことあらず」という言葉がラテン語で刻み込まれていました。
ふたりの結婚はキリスト教プロテスタントの信者にも大きな影響を与え、その後、信者たちはルターたちの結婚指輪に憧れ、ルターとボーラたちと同じようなギメルリングがたくさん作られいて、それは、永遠の愛、そして絆をさらに強めたいという恋人たちの思いが、ギメルリングを発展させていったのでしょう。
指輪(リング)の思い
「結婚したふたりは、双子のようにひとつに結びついて、愛と慈しみのなかで生きるのです。これからは、一体化して新しい人生を歩んでいくのです。」
現在は、愛を育む結婚指輪として、ギメルリングをモチーフにした、オリジナリティーあふれるさまざまな指輪が製作されていて人気があります。
ギメルリング
16世紀後半〜17世紀・ドイツ
華やかで知恵の輪のような指輪で、2本のリングのフープが合わさる部分に、「愛のもと、神のご加護によりふたりは悲しみから守られる」と記されています。
このギメルリングはデザインから見て、求婚する男性が女性の好みなどを調べたうえで、金細工師に作らせたようで、プロポーズのときに初めて、それを見る相手の女性に訴えたいメッセージがストレートに、また大胆に表現されている指輪に、男性の強い気持ちを感じます。
フェデリング
フェデ・リング(fede ring)とは、手と手が握り合うモチーフになっている結婚指輪であり、フェデとはイタリア語で「忠実な」を意味します。しっかりと握り合う手の形がいかにも象徴的です。
起源はやはり古代のローマ時代で、12世紀ころからイギリスで用いられるようになって、変化するデザイン様式に影響を受けながら、その後も大衆に好まれていきました。
忠実の指輪
16世紀後半 オランダ(下側の写真)
愛こそすべてに打ち勝つ、結婚のもとに硬く結ばれる、死が分かつまで
ポージーリング
ポージーリング(posy ring)の語源はフランス語の「posie」で詩を意味する言葉で、リングの表や裏に愛の言葉を刻んである指輪のことで、15〜16世紀ころから流行します。
刻んだ言葉の意味は、恋人への誓いや、ふだん想っていてもなかなか言えない言葉をリングに込めて、マリッジリングとして交換し、また、記念日のプレゼントとして贈ったりする場合もあります。
さらに、ふたりにしか分からない言葉や暗号やモチーフいったものを使ってメッセージを刻む指輪もあります。
愛の指輪
17世紀 イギリス
”ひとつに和合した心は、ここに婚姻の絆を固く結んだ 死がそれを妨げるまで”