宝石物語 日常のストーリー


妻の不満


結婚してから10年になる敦也と友恵は夕食が終わり、寛いでいる敦也の前で友恵は後片付けをせずにテーブルに座っています。


宝石物語

そして、友恵はずっと不満に思っていることがあって、食事の後も結婚前に自分で買った指輪を伏し目がちに見つめながら、


「ねぇ、あなた、お話があるの」


「なんだい」


「やっぱり・・いいわ」


「そう」


部屋にはテレビのバラエティー番組の笑い声だけが響きます。


「ねぇ」


友恵の声が小さいのか、敦也は新聞をみていて反応がありません。


「あなた!」


「うん」


「お話があるの」


「なんだい?」


「お話してもいい?」


「いいよ、どうぞ遠慮しないで聞かせてほしいな」


「それじゃあ・・」


友恵は一呼吸してから思い切って、


「あなたは、結婚してからいままで、まだ何も買ってくれていないわ」


敦也は新聞から顔を上げながら、


「なんだ、そんなことか、早く言ってくれればよかったのに、ところで売りたいものってどんなものなんだい?その指輪かい?」

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