ドレスデン グリーン ダイヤモンド
名前の由来は、”40.7カラットのグリーン・ダイヤモンド”が、200年以上も前から現在まで、ザクセン(現在のドイツ)の首都ドレスデンに展示されているためです。
そして、そのザクセンの貴族である、フリードリッヒ・アウグスト2世が、1742年、このダイヤモンドをライプツィヒにおいて、オランダ商人から20万ターラー(当時を含む数百年に渡ってヨーロッパで使われていた通貨・現在の価値で約3億円)で購入したところから始まります。
最初はブローチにセッティングされ、その後に幾度か作り変えられのですが、常にザクセンの宮廷にあったので、有名なダイヤモンドにありがちな波乱に満ちた歴史とは関係がなく、平穏に時を重ねた数少ない著名なダイヤモンドなのです。
グリーン・ダイヤモンドの超希少性
天然でグリーンの色合いを帯びているダイヤモンドは、極めて珍しく、それが、40.7カラットのアップル・グリーンカラーで、クラリティーの品質も最上級なものであり、サイズは長さ29mm、幅19.7mm、厚み10.2mmの西洋梨のシェイプの研磨済みダイヤモンドは、天文学的な確立でしか眼にすることができないほど希少性の高いものです。
原石の状態であれば100カラット以上はあったであろうことは確かでしょう。
産地
この素晴らしいダイヤモンドの興味深い点がもうひとつあります。
この頃の大きなダイヤモンドは、1866年からの南アフリカ産地を除いて、歴史上、すべてインドの産地から伝わったものばかりです。
ところが、ドレスデン・グリーン・ダイヤモンドは、1742年にフリードリッヒ・アウグスト2世がオランダ商人から買ったところから始まるのであって、それ以前の歴史的資料には一切登場することがないのです。
もし、それ以前にインドやヨーロッパに存在していたとしたならば、ヨーロッパの各君主が、これ程までのダイヤモンドの存在を見逃しはしなかったでしょうし、歴史上の、何がしかの文献資料に登場していたことは間違いないでしょう。
産地に対する仮説
これには、ひとつの仮説があります。
それは、1742年にフリードリッヒ・アウグスト2世が、このダイヤモンドをライプツィヒで、オランダ商人から買ったことでした。
当時のオランダのアムステルダムでは、その100年くらい前にはすでにダイヤモンドの研磨センターとして隆盛を極めており、後に、その重要性が低下していたのですが、1720年にブラジルからダイヤモンド鉱脈が発見されたことによって、再びダイヤモンド研磨産業が活発になっていくことになります。
そして、アムステルダム当局の努力によって、リオ・デ・ジャネイロのオランダ領事は、ブラジルで採掘されたダイヤモンドを、アムステルダムに送って研磨する交渉にも成功します。
ということは、”ドレスデン・グリーン・ダイヤモンド”は、ブラジルの探鉱からオランダに送られた可能性があるのです。
だとすれば、1742年以前に文献などの記録が存在しないという理由は、それが、ブラジルから掘り出されて間もないからだったのかもしれないという仮説が成り立つことになります。