アーガイルのピンクダイヤ
アーガイル(Argyle)の鉱山はオーストラリア・西オーストラリア州キンバリー(Kimberley)の東部に位置する世界最大のダイヤモンド鉱山です。
世界第4位のダイヤモンド生産国であるオーストラリアにおいて、国内全体の年間ダイヤモンド生産量のほとんどを占め、また世界全体の年間ダイヤモンド生産量の約11%を占める重要な鉱山で、希少性の非常に高いピンクダイヤモンドも産出されており、世界全体のピンクダイヤモンド生産量の約90%を占めています。
現在、アーガイルのピンクダイヤモンドは年間の市場流通の産出量は約1,700カラットで、だいたい片手に収まるほどしかなく、実際、世界中の有名な宝石街などに行っても天然のピンクダイヤモンドはほとんど見ることができないと思います。
それほど、アーガイルのピンクダイヤモンドは希少性の高い宝石なのです。
発見までの道程
オーストラリアでは、1890年代にダイヤモンドの調査をしても主要な鉱脈はみつかりませんでしたが、当時の地質学者たちは、オーストラリアのアーガイル地方にダイヤモンド鉱脈があることは信じていました。
それから数十年後、1972年にそれらしき場所を確信して、合弁企業が組織され、オーストラリアの資源企業であるアシュトン・マイニングによってアーガイル地方で探鉱が行われ、1979年にダイヤモンドが発見され、1985年に生産が開始されます。
ピンクダイヤモンドの価値
アーガイル鉱山で生産されたピンクダイヤモンドは、ダイヤモンド販売拠点であるベルギーのアントワープ(Antwerp)を経由して、米国のニューヨークや英国のロンドン、日本の東京など世界の主要都市で入札によって販売されます。
一般的な市場では、透明で無色のダイヤモンドが一番高価であると思われているようですが、カットも重さも透明度も同じならば、色によっては、天然のカラーダイヤモンドは透明のダイヤモンドよりも高価な値がつけられています。
ピンクダイヤモンドもその一つで、世界のオークション市場であるニューヨーククリスティーズでも、同じような条件では、無色のダイヤモンドより高値で落札された事実からも、ピンクダイヤモンドの稀少性がわかるでしょう。
また、ピンクダイヤモンドとしての価値判断は、ほとんどの場合は色とおもさで決められています。
というのも、貴重なピンクダイヤにとってはカット基準を高めるために、おもさを減らしたり(カットは、GOOD、VERYGOOD、EXCELLENTとグレードが良くなるにつれてカットしていきますので軽くなります)するのは、なるべく控えます。
そして、ピンクダイヤモンドには、インクルージョン(内包物)がつきものといわれているように、ダイヤモンド自体の耐久性に関わるようなインクルージョンでもない限り、そこまでは気にされないからです。
そのため、輝きや美しさを大きく損なわない限りは「良質」の範囲なのです。要は、どれだけ色がのっているかが重要なポイントです。
カラーの基準
ピンクダイヤモンドは、基本的には「FANCY」以上の色合いが良いとされています。見た目も同じですが、鑑定書のカラーで「ブラウン」や「オレンジ」の文字が入ったピンクは比較的に評価は低いので、注意してください。
ただし、色合いにブラウンが入っていて、鑑定書でブラウニッシュピンクなどと表記されていても、一般的にはピンクダイヤである事には変わりないので、もちろんピンクダイヤといって売られています。
また、「パープリッシュ」という紫が入ったピンクダイヤもみかけますが、これは人気もあり、一般的にも評価が高く、普通のピンクダイヤよりも高くなる事もしばしばあるようです。
そして、アーガイルで産出されるピンクダイヤモンドのカラーは、鑑定書のカラーでは、「インテンス」「ディープ」「ビビット」という文字が入ったものは、ピンク色やパープル色が強く深みのある色合いで人気があります。
さらに、ピンクダイヤモンドにはグレーとの混色が存在します。
なお、色合いは個人の好みで主観によって変わりますので、購入される際は、お好みの色合いと価格のバランスで比較してみてください。
(とは言っても比較するほどピンクダイヤモンドを置いているところを探すのが大変かもしれません。)
アーガイル・ピンクジュビリー
2012年2月、アーガイル鉱山で12・76カラットのピンクダイヤモンドの原石を採掘したと発表しました。
同国で掘り出されたピンクダイヤとしては最高の大きさということです。
ダイヤは「アーガイル・ピンクジュビリー」と名付けられました。同鉱山のピンクダイヤ部門の責任者は、同鉱山26年の歴史のなかでは最高のピンクダイヤで、このようなものはこれからも見つからないだろうと言っています。
そのほかのカラーダイヤモンド
アーガイルは、採掘されるダイヤモンドの90%以上がブラウンからイエローに分類されるめずらしい鉱山です。
こういったダイヤモンド、特にブラウンダイヤモンドは市場価値としては低いものでしたが、アーガイル鉱山の経営者はインドの安い労働力を用いて、これらのダイヤモンドを「コニャックダイヤモンド」や「シャンパンダイヤモンド」として売り出すことに成功しました。
産出量
産出量がピークであった1994年には、世界全体の年間ダイヤモンド生産量の約40%を占める4200万カラット強のダイヤモンドを産出していましたが、その後生産量は減少して、2009年の年間ダイヤモンド生産量は約1060万カラットで、前年比でも大幅減となっています。
そのため、生産開始当初から露天掘による採掘を行っていたのですが、資源量の枯渇のため2010年頃に露天堀を終了し、坑内堀による採掘へ切り替えることでマインライフ(操業期間、鉱山寿命)を2018年頃まで延長させる見通しです。